一関市街地より県道19号線を東へ一キロ、JR東北本線を横切ると遥かな田園地帯が広がる。旧前堀村である。東北新幹線に至る間、19号線と磐井川の中間に当院は静かに佇む。さらに西方二キロ先には遊水池が広がり、磐井川と北上川の合流点は、常に満々と水をたたえ、東北の歴史の象徴、母なる日高見川を彷彿させる流域である。静かな時と暴れる時の極端な二面を持つ川、その中に長泉院は五百年に亘って息づいている。
 磐井川を堀として取り入れて、天正の昔、葛西の旧臣小野寺左馬之丞が前堀城(要害)を築き、城の一郭に菩提寺長泉院を建立したと伝わるが、今日に至る迄、幾度氾濫に遭遇したのであろうか。そのたびに檀信徒は、川の流れに掉さし、みちのくの古刹、正法寺の流れを汲む長泉院を再興し、試練に耐えて来た。